14話 3人組
- asahi
- 5月10日
- 読了時間: 4分
ロキの声に目の前にいたグループが振り返る。
そのグループは男が2人、女が1人の3人組だった。
年齢は3人ともアサヒと変わらないぐらいに見える。
3人の中で1番背が大きく、力持ちであろう見た目の男がまずは口を開いた。
「やあロキ。今から食事かい」
「そうなんだよ。ローグ達も一緒に食べようぜ」
ロキの誘いに反応したのは頭にリボンを付け、剣を背負った女。
「私は嫌よ。あんたがいるとゆっくり食べれないじゃない」
「そんなこと言わないでよ。クレア」
最後に口を開いたのはツンツン頭で3人のリーダーのような男。
「まあいいじゃないか。たまにはワイワイ食事をするのも悪くないだろう」
「だよな!やっぱりベイルは話がわかるな」
あっという間に6人で食事をすることとなった。
目の前には見たことはないが美味しそうな匂いがする料理と初めましての3人。
アサヒは急な展開に置物のように座っていた。
そんなアサヒを見てベイルが声をかける。
「早速だけど、君は誰なのかな」
「こいつは…」
ロキが紹介しようとするのをアサヒが止めた。
「俺はアサヒ 17才!日本で生まれ神社で育った、剣道2段の高校生」
お決まりの挨拶が決まったところで、目の前の3人組は驚いた。
それを見て笑うロキ。
「やっぱりそうなるよな。俺も最初はそうだった」
アサヒの自己紹介は初めての人に驚きを与える。それはベイル達にも同じだった。
このやり取りを見ていたミアはジンのリアクションがみんなと違った違和感を拭えなかった。
アサヒの自己紹介も終わり食事が始まる。
「うまい」
初めて食べる料理は言葉が漏れるほど一口目から美味しかった。
「だろ!ここの料理は全部うまいからどんどん食べろよ」
自分が褒められたかのように自慢げなロキ。
見た目通りたくさん食べているローグがアサヒに質問を始めた。
「アサヒは日本で生まれ育ったって言ってたけどどこの国なんだい」
当然の疑問でありここにいるものは誰も日本を知らない。
「日本は…日本という国なんだ」
「そ、そうなんだ…」
アサヒの言っていることはアサヒにとっては当たり前でもここにいるものにとっては不思議な話だ。
その場の空気が少し重たいものになったところでミアが話始めた。
「アサヒがいなかったら私はここでみんなと食事もできなっかたの…」
「ミアどういうことなの」
クレアの問いにミアはギールとの一部始終を話した。
ファーガスがギールにやられたこと、アサヒがギールを退けたこと。
話が進むにつれベイル達の驚きと困惑は増していった。
一通り話が終わりさっきよりもさらに重たい空気がテーブルを覆う。
当事者であるアサヒとミア、先に話を聞いていたロキも改めてことの重大さを感じた。
重い空気の中、口を開いたのはベイル。
「アサヒはファーガスさんが勝てなかった奴からミアを守ったんだな。強いんだな」
「いや…そんなこと…」
ベイルの言葉を素直に受け止められなかった。
それでもベイルは続ける。
「剣を使って戦ったってことは、さっき言ってた剣道ってのが剣を使う技か何かなのか」
当然アサヒ以外は剣道を知らない。
「剣道っていうのは竹刀を使って…いや剣を使って1対1の戦いをすることなんだ」
竹刀と言っても分からないと思い、真剣での戦いに言い換えた。
「そういう戦いのことを剣道っていうのか。それならクレアは剣道何段なだろうな」
「知らないわよ。剣道なんて初めて聞いたんだから」
「それならアサヒの方が上なのかもね」
ローグの言葉に反応するクレア。
今から確かめてみるかと言わんばかりに立て掛けてある剣を持ち立ち上がるのを慌てて止めるベイル。
そんな光景を見て笑うロキと微笑むミア。
そんな5人を見てなんだか安心したアサヒ。
いつの間にか重たい空気は晴れて6人での食事と会話が進んだ。
食事も終わり店を出る。
「今日は楽しかったな。またみんなで食べようぜ」
ロキは楽しそうに話すがクレアは首を振る。
そんなクレアを見て笑う4人。
「今日は新しい出会いも会って楽しかったよ。ロキ達はその3人でチームを組むのか」
チームという言葉にアサヒは疑問を持ったが、ロキは真剣な顔で答えた。
「もちろんそのつもりだ。なあミア」
「ええ。そのつもりよ」
目の前での会話が何を意味するのかよく分かってはいなかったが、ミアとロキとチームになることがなんだか嬉しかった。
「ならうちのチームも負けないように頑張らないとな」
そう言ってベイル達は去っていった。
ベイル達を見送ったアサヒ達に守衛が駆け寄ってきた。
「ミアさん、ロキさん、それにアサヒさん。ジン隊長がお呼びです」
突然のジンからの呼び出しに驚く3人。
理由は守衛も分からず、とにかくジンの元へと向かうこととした。
