賑やかな街並みの雰囲気とは異なり、俯き気味で歩くアサヒ。
知らない街の雰囲気を楽しんでいる感じではなかった。
しばらく歩いていると買い物をしているミアとロキが気がついた。
「あれアサヒだよな?」
俯き歩くアサヒを見てロキはミアに確認した。
「アサヒ!」
ミアの声が街中を通り抜ける。
その声に顔を上げる。
そんなアサヒを見て2人は不思議そうな顔をした。
「大丈夫…?」
ミアはどこか不安な気持ちを素直にぶつけた。
もちろん傷は心配だが、ジンと残った時間がなぜか心配になっていた。
ミアの心配を払うようにアサヒは笑顔で頷いた。
「ジン隊長とは何を話ししてたんだ?」
ロキは躊躇することなく尋ねた。
ミアも聞きたかったが、躊躇していた。
聞いてはいけない何かがあるように感じたから…
ロキの質問にアサヒは少し間を取って答える。
「怪我の心配をされただけだよ」
その間は数秒だがアサヒの中ではジンとの会話を振り返っていた。
「君の名を聞いた時から正直驚いたよ」
「ど、どういうことですか!?」
「アサヒ。君は…」
アサヒの顔に緊張が走る。
そんなアサヒを見ながらジンは続ける。
「君は日本から来たんだね。まさかその言葉をもう一度聞くことになるなんてね」
「ど、どういうことですか!!」
勢いよくジンに尋ねる。動揺は隠せなかった。
少し間を取りジンが答える。
「昔、君以外にも日本から来たという男がいたんだよ」
自分以外にも日本から来た人がいる。その事実に驚いたが、同時にその人がどうなったのか気になった。ちゃんと戻れたのか、それともそのまま…
「その人はいったい…」
「それがね、突然姿を消してしまったんだよ。本当に突然にね」
ジンにもどこへ行ったか分からなかった。
「そうですか…」
突然消えたのが戻れたからなのか、それとも全く異なる場所へ行ったのか。
自分のこれからがどうなるか全く分からない不安が急に襲ってきた。
不安げなアサヒの顔を見てジンが話を続けた。
「その男は、アサヒにどこか似ている人だったよ」
その言葉にアサヒはなぜかあの夢に出てくる父の影を思い出した。
なぜかは分からない。ただこの場所と父が関係しているのではないかと思いたかったのかもしれない。
「そうだったんですね」
先ほどとは違うその顔にジンも笑顔を見せる。
「いつかその人ともどこかで会えるかもしれないね」
ジンとの話を終え、部屋を出てから何かを考えるようにずっと俯きながら歩いていた。
昔の父とのことを思い返しながただ歩いていた。
そんなことを振り返りながらロキに答えた。
「そうだったのか。とりあえず怪我早く治るといいな。なあミア」
ミアはやはりアサヒから何かを感じている。
「そうね…」
そんな2人を見てアサヒは笑顔を見せる。
「2人ともありがとう!これからもよろしく」
アサヒの笑顔にミアも少し安心した。
街を歩く3人。ロキのお腹がから音がする。
その音に恥ずかしさを見せるロキ。
「なんだかお腹が空いたな。どこかで飯でも食べようぜ」
「そうね。バタバタしてて何も食べてなかったわね。アサヒもお腹空いたでしょ」
緊張感が和らいだアサヒのお腹も鳴った。
こちらも照れ笑いながら答える。
「そうみたいだね」
「そうと決まればいつもの店に行こうぜ」
ロキは元気よく先頭を歩き始めた。
少し歩くとその店に着いた。
当然アサヒは見たことないお店であり、どんな料理が出てくるかも分からない。
「この店はなんでも美味いんだぜ。さあ入ろうぜ」
勢いよく店に入るとロキが何かに気づく。
「よう!」
目の前にいたグループに声をかけた。
アサヒにとって新たな出会いとなる。
