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10話 3人目

門を眺めるアサヒの横で、門前の守衛に声を掛けられるミア。

「ミアさんお戻りですか」

「ええ…」

ミアの返事に何かあったのかと思う守衛。


そのやりとりを見てアサヒは少し顔を下げた。

ファーガスさんのこと知らないんだよな…


「ジン隊長は戻ってますか?」

「お戻りですよ」


新しい名前が出てきた。

ジン隊長…?


守衛との会話を終え門が開く。

「さあ、行きましょうアサヒ」

「ああ」

大きな門を2人で進んでいく。


門の先には街が広がっていた。

そこには人がたくさん行き交い、商店が並んでいる。

まるでゲームの世界かのような光景に驚いた。

「スゲー…」

驚いた顔をしているアサヒを見て微笑むミア。


初めて見る景色の街を歩きながら、落ち着かない様子で辺りを見渡しながら進んだ。


進み始めて程なくして、お店の人から声を掛けられた。

「お帰りミアちゃん」

元気の良いおばちゃんが話しかけてきた。

「ただいま!」

ミアも笑顔で返事をした。


すぐに違う店からも声をかけられた。

「ミアちゃん果物もってきな」

「ありがとう!」


ほかにもたくさんの人に声を掛けられるミアを見て驚いた。

ミアはこの街の人から慕われているんだな…

そして改めて自分が知らない世界に来たのだと感じた。



街の人から声を掛けられながら進んでいると、前方からこちらへ向かってくる人に気がついた。

「なんかこっちに向かってきてない?」

「え?」

ミアは前方を見つめた。


「ミーーアーー!」

その声に驚きと少し嫌そうな顔のミア。


「!!!」

ミアの前に勢いよくその男はやってきた。

「お帰りミア!」

その男の登場にちょっと引き気味のミア。


「た、ただいまロキ」


ここからロキの怒涛の喋りが始まった。

「ミア元気だった?怪我はない?今日も可愛いね!」

勢いよく喋るロキに返事も返せず苦笑いのミア。


話をしながら後ろにいるアサヒに気づいた。

「ミア後ろにいるのは?」


やっと話がひと段落したことに安堵し、笑顔で答えた。

「アサヒよ」


聞いたことも見たこともない男の紹介を嬉しそうな顔でされたことに少し不満そうな顔をした。

「アサヒ…?」


紹介されたアサヒはミアの後ろで会釈した。

「どうも」


じーっと睨むようにアサヒを見つめる。

なんだこの男はミアと親しげにしやがって…

ロキは苛立ちを隠し切れる性格ではなかった。

「なんでミアと一緒にいるんだよ。こんな得体のしれないやつが!」


得体のしれないやつ…

ロキの言葉にアサヒも苛立ちが湧いてきた。


そんな2人の状況を見てミアが慌てて対応した。

「ア、アサヒはね、私を救ってくれたの」

「救ってくれた?こんな弱そうなやつが?」

さらに苛立つアサヒ。


ロキの言葉にミアも少しムッとした。

「そんなことないわ!アサヒは必死に私のことを…」


アサヒを庇うミアを見てロキの苛立ちはピークに達する。

「こんなわけのわからない奴とは関らない方がいいよ!」


わけのわからないやつ…アサヒの苛立ちもピークに達した。

今まで黙って聞いていたがついに沈黙を破った。


「俺はアサヒ! 17才!日本で生まれ神社で育った、剣道2段の高校生!わかったか!」


あまりの勢いと声量にロキは驚いた。

「お、おう」


驚くロキを見ながら、アサヒのこのフレーズに微笑むミア。

自分のことを伝えれてスッキリしたアサヒと、やっと落ち着きを取り戻したロキ。

3人の関係はここから始まった。





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